CASE8. 葬儀社の手配した寺院
転勤で数年前に引っ越してきたHさん家族。
お父様が高齢という事もあり、地方から呼び寄せて一緒に暮らし始めた矢先に病気が発覚し、間もなく亡くなりました。
葬儀社にあてはなく、Hさんが「分家」ということもあって、お付き合いのあるお寺もない状態。葬儀社に相談したところ、いいご住職を知っているとの事で、その葬儀社にご住職の紹介もお願いしました。
その葬儀社の見積りには「お布施」という項目が入っていて、読経と戒名合わせて35万円と明記してあり、なんだか明朗会計な感じがしたそうです。
そしてお通夜当日。 現場に現れたご住職は、葬儀社の社員と大変親しそうで、とっても「手馴れた」感じがしました。その時は、それがかえって安心感につながったそうです。
しかし通夜が終わったところで、親戚のあいだで「どうもお経や戒名がH家の宗派と違うんじゃないか?」という話が持ち上がっており、葬儀社に確認を取ったところ、なんと本当に「Hさんがお願いした宗派とは違う宗派のご住職」が来てしまっていたのです。
戒名も頂いてしまったし、そのうえ通夜も違う宗派で行なってしまった事実に、Hさんは愕然としてしまいました。
次の日の告別式には同じ宗派のご住職が派遣されてきて、戒名も付けなおし、葬儀社からはお布施の分と人件費分を値引きされましたが、通夜の失敗は取り返しがつきません。親戚からもあきれられ、ものすごく後味の悪い思いをしたそうです。
トラブルの原因
葬儀社の「手配ミス」が原因と思われたこのケース、あとからとんでもない事実が・・・。
なんとその葬儀社が裏で「宗教法人」を持っており、紹介されたご住職は、その葬儀社が運営する宗教法人に属している、いわば「社員」だったのです。
その宗教法人はお寺ではなく、いろいろな宗派の「葬儀専門住職」を集めた、まるで「タレント事務所」のようなシステムで、お布施も葬儀社が一括管理、ご住職達には「お布施」ではなく「お給料」が支払われていました。
当初葬儀社から「いいご住職がいるから」と言われて紹介されたお寺というのは、結局は自社の利益を上げるための「オプション」のようなものだったのです。だから「お布施の分を割り引く」という不自然な事も出来たのですね。
そして、その宗教法人は、喪家と同じ宗派のご住職の都合がつかないと他の宗派で対応してしまうことが日常茶飯事。Hさん以前にも何度かトラブルが起きていたそうなのです。その界隈の葬儀社さんたちには有名な話でした。
今回の原因はこの葬儀社のシステムそのもの。もっと言えば倫理観の欠如。大変根深い問題でした。
トラブル防止策
葬儀社にご住職の紹介をお願いするケースは、決して少なくありません。
想像してみて下さい。
家族が急に亡くなって、気持ちや時間に余裕がない状態なのに、頼めるご住職がいなかったら・・・。
そんなときに葬儀社から紹介してもらえると聞いたら、ほぼ確実に依頼してしまうと思います。ご住職がどこから来るのかも確認せずに・・・。
しかし、良心的な葬儀社であれば、ご住職の紹介をお願いする際には、どこのお寺で、どんなご住職かをちゃんと説明してくれます。
依頼する時に、どこのお寺のどんなご住職に来ていただけるのかを聞き、その問いにちゃんと答えられる葬儀社からの紹介であれば、今回のようなトラブルにはなりません。
ひと手間かけた確認作業が、トラブルを防止する秘訣なのです。
解説
あなたは自分の家の宗派を知っていますか?他の宗派との違いは?今の時代は「分からない」というのが普通だと思います。
Hさんも、親戚からの指摘がなければ気付かないままになっていた事でしょう。
現在は、菩提寺と檀家の関係がどんどん疎遠になってきています。法要も省略してしまうことが増えていますし、お墓参りも数年に一度行けばいいほう。
お葬式も25年に1回なんて言われていますから、普段の生活とは全く関係がなくなっているのですよね。
とはいえ、「もっと普段からお付き合いしましょう」などと押し付けるつもりは全くありません。
考え方なんて人それぞれですし、無理してお付き合いしても、不満が出てくるだけだと思います。(それに、お寺側も現状を憂いているだけで、ほとんど努力していませんし・・・)でも、今回のようなトラブルに遭わないためにも、今のうちに菩提寺の有無や宗派くらいは確認しておきましょう。
そして、Hさんのケースとは別の話になりますが、葬儀社に紹介されたご住職が「寺なし」という事も少なくありません。「お布施の負担が少ないから」と、喪家が希望する場合は問題ないのですが、知らずにお願いして、後日挨拶に伺ったらお寺は無く、アパートの一室だったなんていう笑えない話もあるのです。
「ご住職様だから」とひとくくりに安心せずに、どこのどういうお寺なのかを疑う時代なのかもしれませんね。
葬儀相談員市川
愛の個人的「ボヤキ」
葬儀社が裏で宗教法人を持っていたり、(上記の葬儀社とは別ですが、宗教法人を使って8億円の脱税をした葬儀社が、平成18年に検挙されています)
「第三者機関です」なんて言っている相談機関のふたを開けてみたら、運営が葬儀社そのものだったり。 どうしてこうもまあ、おおっぴらに出来ないようなことを次から次にやっているのでしょう・・・。
利益を求める気持ちは分かりますが、儲かるのだったら消費者を騙してもいいということではありません。
葬儀を商売にするのであれば、せめて真っ当に、嘘や騙しのない姿勢であってほしいものです。
CASE9. 断りきれない営業トーク >>