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CASE9. 断りきれない営業トーク

ご主人を自宅での療養後に亡くされたOさんにはお子さんがいませんでした。頼れる親戚も無く、1人でお葬式を出さなければならなかったのです。

幸い、ある程度の貯えもありましたし、参列者も本当に親しいお友達数名だけ。自宅からひっそりと送り出してあげようと思っていたので、金額もそう多くはかからないと思っていたのです。 


まずはOさん、電話帳をめくって葬儀社を選び、家まで来てもらいました。葬儀社からきた担当者はとても人あたりがよく、安心したOさんは彼にお任せすることにしました。

詳しい打合せをしながら見積りを作ることになったので、Oさんの希望として「自宅からひっそりと送り出してあげたい」と伝えたところから、彼の営業トークが炸裂し始めたのです。


「ご主人の経歴からして、このクラスの自宅用祭壇では、故人様本人に恥ずかしい思いをさせてしまいます。」

「自宅での葬儀は部屋の方付けが大変だし、ご近所にも気を遣わせてしまいますから、当社の会館を使ったほうがいいですよ。」

「当社の会館なら、専門のスタッフが全てお世話させて頂きますのでO様の精神的なご負担も少なくてすみます。」  

葬儀社さんが言うことにだんだんと流されるOさん。
昔の葬儀は自宅から送り出すのが当たり前でしたが、最近の葬儀がどんなものかも分からないので、担当者が勧めるとおり、葬儀社の自社斎場を使って、大きな祭壇を飾ることになりました。

実際のお葬式は、広い会場に立派な祭壇を飾りながらも、参列者が20名という、なんだか寂しいものだったそうです。飾った祭壇が大きかった分、費用もそれなりにかかってしまい、会場費もバカになりませんでした。


私が体験談を伺ったとき、Oさんが、
「私がおばあちゃんだから、きっとお金が取れると思ったのね」

と残念そうに言っていたのが、強烈に頭に焼き付いています。


トラブルの原因

実はOさん、以前ご両親の葬儀を経験していて、全くの素人というわけではありませんでした。

でも、それは20年も前の話。記憶があいまいなのと、「今はこうなのかしら?」と思ったせいでほぼ担当者の言いなりの状態になってしまったんです。

もう一つ、依頼するのを決めるタイミングも早すぎました。

せめて、提案や内容を聞いてから決めたかったところです。  


トラブル防止策

1社からしか話を聞かないということは、お葬式の選択肢までも1社に委ねることになってしまいます。
失敗を避けるためには、最低2社からは話を聞きたいところ。

そして、家まで来てもらうときに注意しておきたい事としては、

葬儀社を「呼んでから」要望を伝えるのではなく、最初の問い合わせの時に「自宅でひっそりと送りたい」等、葬儀社を「呼ぶ前」にご自分の要望を伝えて、それに合わせてくれるところに来てもらうようにするのです。


そうすることで、要望と違った葬儀社に時間を割かれることなく、ゆっくりと検討できます。

そして「話を聞いてからいったん帰ってもらう」ということもとても有効な手段です。

担当者が目の前にいたのでは、ゆっくり考えられないという場合も多く、どうしても葬儀社の意向に引っぱられがちになります。

特に家族や親戚など、自分の味方がいない場合は、言いなりになりがち。「検討してから電話しますので、いったんお帰りいただけますか?」と、はっきり伝えましょう。

Oさんの場合、担当者の都合の良い営業トークで、うま〜く高額のお葬式にいざなわれたということになります。

でも考えてみれば、要望を何一つ聞いてくれないってことは、その葬儀社に頼む理由だって何一つありませんよね?


「せっかく来てもらっているから」とか、「ドライアイスまでしてもらっちゃっているから」
なんて気にするよりも、いったん帰ってもらって、別の葬儀社をあたる勇気を持ちましょう。そこまでの料金だけ支払えばいいのです。

ドライアイスの処置までが終わっている場合は、検討して別の葬儀社を探す時間くらいは充分あるのですから。

もう一つ。 Oさんの場合は、葬儀社の特徴と、ご自分の要望が合っていませんでした。 
自宅葬を希望しているのであれば、何も自社斎場を持っている葬儀社を選ぶ必要はありません。自宅葬プランを打ち出している葬儀社を選ぶ方法もあったのです。

あなたが葬儀社を選ぶ時には、この辺のことも頭に置いておくといいですね。


解説

Oさんのお家は、こう言ってはなんですがけっこうな「お金持ち」です。
きっと門構えを見た担当者の目は、(¥_¥)こうなっていた事でしょう。

Oさんのようなお金持ちのおばあちゃんからは、トーク次第でいくらでも取れると思ったのかもしれません。要望なんて二の次で・・・。     

確かに都市部を中心に、自宅でのお葬式は少なくなってきていますが、それでも住み慣れた我が家から送り出してあげたいと希望する方はいらっしゃいます。

部屋の片づけだって、葬儀社が人員を手配してくれますから、自分で全て片付けなければいけないわけではありません。Oさんが自分で片付ける必要はなかったのです。

自宅葬のリスクを伝えた上で、それでもお客様が希望するのであれば、それを拒む理由は葬儀社自身の利己的なものと言わざるを得ません。

そもそも、斎場を持っている葬儀社は、自社斎場を使いたがるものです。せっかく建てた斎場を使わないと、維持費もバカになりませんもの。

何より、お葬式専用で使いやすく、勝手もよく分かっていて、自宅葬よりも大きな祭壇が飾れますから。そのうえ会場費や光熱費まで計上できるのですから、言う事ナシです。


しかし、葬儀社は一社だけではありません。
自宅葬を希望する場合、葬儀社の場所も関係ありません。


隣町の葬儀社に来てもらってもいいのです。
自分から選択肢をせばめるような事だけはしないよう、くれぐれも気をつけましょうね。


葬儀相談員市川 愛の個人的「ボヤキ」

家族も親族もいないお葬式で、参列者は少ない友人だけ。 
そのうえ自宅でひっそりと送ってあげたいと希望しているのに、斎場を使って、大きな祭壇を飾る必要がどこにあるのでしょうか?

葬儀社は「小さな祭壇では故人に恥ずかしい思いをさせてしまう」と言いますが、実際に恥ずかしい思いをしたのはOさん本人です。

おばあちゃんをダマくらかして仕事を取るなんて、悪徳リフォーム業者と一緒です。営業成績だけは優秀なのでしょうけど、人としてはどうなのでしょう。大変疑問です。



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